図5. 本書に登場する主な都市の位置.
見開きに、著者はチューリンゲンについて次のように紹介しています。
『いみじくも≪ドイツの緑の心臓≫と呼ばれるチューリンゲンには、多くの緑の森や美しい谷がある。境を越えてチューリンゲンに入る人は、誰もがドイツの歴史的な風土に立ち入ることになる。聖エリザベス(die heilige Elisabeth 1207-1231)、ルター(Luther 1483-1546)、ゲーテ(Goethe 1749-1832)、シラー(Schiller 1759-1805)、ヘルダー(Herder 1744-1803)他、有名なドイツ人たちがここで仕事をしながら暮らした。
例えばワイマールWeimarとエアルフトErfurtのある場所や、ワルトブルトWartburgの至る所で、そこを訪れた人々はドイツの歴史に出会うことでしょう。歴史時代のチューリンゲンには幾つかの公国があり、その国々には美しい首都がありました。人はその限られた空間の中で多くの文化を見出すことでしょう。ワイマールや、ルードルシュタットRudolstadt、マイニンゲンMeiningen、ゴータGothaなどは、それゆえ常に訪れる価値のある都市です。
そこに住む人々の手工業と独創的な精神が、チューリンゲンと云う地方を有名にしました。私たちがいま、例えばガラス工場や陶磁器工場、人形作り工場、パイプ製作所、あるいは光学器メーカーなどに居ると考えてみましょう。この地における技術と手工業、とりわけパイプ製造は長期間にわたって全盛期を維持しました。それ故、この本をパイプ工場に奉げます』
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【目次】
図6. 目次の風景
各章に番号を持たせると、専門書の目次に似た風情があります。
ページは2〜3ページごとに7頁から127頁まで振ってあります。記帳面の極みです。
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あとがき:
ウルムパイプの本を初めて見てから今日までに、次のことが分りました。
1)英国のパイプ史は、クレイに始まって19世紀後半からブライアー替わるという明確な時系列がある。これに対してドイツでは、喫煙習慣が広まった17世紀中ごろにはクレイとメタルパイプが使用されたが、18世紀に入ると間もなく、クレイ及び磁器、メシャム、木製パイプが 共存することになった。その後、これらにブライアーパイプが加わる。
2)ドイツでクレイパイプが作られた地域と、メシャムパイプ及び木製パイプが作られた地域は比較的明瞭に分れている。すなわち前者は主に低地ドイツ〜中部ドイツで、後者は高地ドイツで製造された。
3)木製パイプを作る基礎技術であるロクロ(旋盤)術は、サンクロードだけではなく、ウルムやリレハンメルなどヨーロッパ各地の谷間において、伝統工芸の中で培われていた。特にウルムではブライアーの発見以前から、ロクロを使った木製パイプの製造技術が発達していた。 さしあたりこの辺までで