§10. 国内の競争
同業組合は引き続き絶えず機能していたが、ハウダ市の外でハウダのパイプ職人と商人が関係していない詐欺的な商売が行われた。1739年11月に、ハウダ・パイプ職人組合に属する組合長<1>と親方の長<2>が、『 ”ホラント州及び西フリースラント” で、パイプ商人が優良品と陶磁製 (これは最高品質であった) を、普通品に混在させて売っていた』 との苦情<3>を申し立てた。 組合長らは、『このことは単にハウダのパイプ産業に留まらず、全オランダのパイプ産業全般の没落に繋がりかねない』<4>とも付けくわえた。 そして、ホラントや西フリースラントなどの商人が、火皿の上に置いている彼らの普通品マークの横に、ハウダで作るワッペンを置いてくれるように依頼した<5>。しかし本来そのような措置は、製品の総てが最良品質であるときに適用されるべきであった。そこで国王はホラント側に有利な権利を与える認可書<6>を出し
た。その中では、ハウダ・ワッペンは、 ”陶磁製パイプ” に限って表示することを許すとされた。
しかし世間は期待と異なる反応を現わした。認可書が布告された後、”陶製パイプ”の横に別の”最優良種”<7>のパイプがハウダ・ワッペンを表示することなく並べて売られた。そのパイプの品質は、”陶磁製パイプ”に劣らなかった。商人たちはハウダ市製の特別ワッペンを持っていなかったので、優良パイプの買取を拒否した。それで再度、新らたにわざとらしい認可書が与えられた。そこには次のように記されていた; 『 1740年3月4日−オラント州及び西フリースラント州が係る認可書.ハウダ市内のパイプ製造者組合で作られたパイプについて; 『 ”優良種” と ”普通種” のパイプはそれぞれのボウルにハウダ市のワッペンを付ける, また夫々のワッペンの上にS文字<8>を表示してもよい』。
その後、ハウダ外部のパイプ製作者たちはそのマークの使用を禁止され、違反すると600fl.(Florinフロリーン)以上の罰金が科せられた。
#06に続く
<1>Obermeister, <2>Altmeister ;職制上の名称のようです。適切な訳語を知りません。
<3>『優良品と高級品が並み扱い(廉価販売)されている』と云うクレーム。
<4>この時点ではハウダに直接的な損失は出ていない。しかしホラントで薄利多売が成功すると、次にはハウダが値引き攻勢を受けかねない。そして価格の秩序が壊される
<5>申し立てた内容は、≪特別な普通品扱い≫と云う折衷的な要求のようです。嘆願先は書かかれていないが、ホラントの参事会か?
<6> 独訳Patent,仏訳brevet。辞書では勅書、(国王の出す)認可書 などと訳されています。 <5>の嘆願に対して、回答先はここの文からは国王であったことが分る。
<7>feinster Sorteと表現されている。優良カテゴリーの中の上物パイプであるが、陶磁製ではない。昨日の<品質>の解説に、feinsteというカテゴリーは書かれていない。
<8>このSは、普通パイプを表すオランダ語slechte pijpenのsを意味する記号か。
======
あとがき:
ここの原文は端折り気味なので、イザコザの実際が分り難いですが、要するに統制価格が、崩れ始めたということのようです。明日は休載。