この記事は先のNote(4/x)【あとがき】に続く内容で、語義について考える。
テーマは
<oil curing>という<word>は、誰がいつ最初に使い、その意味するところは何であったか
------------------------------- まとめ -------------------------------
curingは、日常生活の場面では、『治癒、治療』と『干物を作るための乾燥』が主要な意味である。後者の意味で使われる文例を探すと、”seasoning” や ”drying”の場合とは異なり、やや限定的に使われている。つまり『乾燥する目的物すなわち素材』は制限されてはいないが、食物が対象となっている例が多いようだ。
タバコの世界でキュアリングという語は、『 農家が畑で採集したタバコの生葉を倉庫などに持ち込んで行う(最初の)乾燥工程の全体』を指し、英語圏では半ば専門用語化している。 curing された葉が、タバコ製造工場に持ち込まれて加工される過程での乾燥作業には drying が使われ、curing は使われない。
木材関係の世界では、『木を乾燥させる』意味での乾燥は、”seasoning”か”drying”が普通に使われる。両者の区別は、前者は『温度域が常温乾燥』の場合を指すケースが多いが、そうでない時もある。 『加熱乾燥』を指す場合には、後者がよく使われている。この使い分けは学術書ではかなり明確であるが、一般図書では必ずしも明確でない。
木材工学(あるいは森林資源学)の論文や技術文書を見ると、”curing” は『硬化』の意味にほぼ限定されている。 例えば合板を作成するときに使用する接着剤の硬化などを curing と表現している例が見られる。curing substance といえば『硬化剤』である。
A.H.Dunhillは”The Gentle Art of Smoking(1954)”で、タバコの製造法とパイプの製造法について詳しく解説した。同書は団伊玖磨により”ダンヒルたばこ紳士(1967)”として完訳された。翻訳で『乾燥』としている元の言葉は、"season"、"dry"、"cure"の三通りがある。<ダンヒル英語>の使い分けは、かなり明確であるように見える。
ダンヒルの"curing"は<摘み取った直後の葉を乾燥させる>場合に限られている。
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上のまとめは、以下の文献に使われている用語例に基づいている。
1)ダンヒルとサシエニの文書に、cureあるいはcuringは全く使われていない。
A.Dunhill:1) Improved Process and Apparatus for Seasoning and Finishing Tobacco pipes,1913(GB). *1913年1月27日付けの仮仕様書と、7月26日付けの正規仕様書がある。文書の冒頭句; ブライヤーまたは他の木材でパイプを作る際に、油は有益な補助材料であるが、喫煙する時の熱で臭気がでること、ボウルの外観が滲み出る油で損なわれるという問題がある。製作時にパイプに浸み込ませた油をできるだけ速やかに、障害が出ない程度まで乾燥あるいは除去しないと、工場での製造には適さない。それで乾燥器を考案した--という趣旨の説明がある。以下の本文は、器械構造と取り扱い方の説明が全てで、US特許文書にみられる『油漬け』や『サンドジェット』の説明がない。1913年の乾燥器開発は、Bruyereの仕上げ、工期短縮に重点目標がおかれていたと考えてもよいだろう。Shell製作への応用はこの後の考案と思われる。
2) Apparatus for seasoning and finishing tobacco-pipes,1920,1921(US).『D考察』が詳しい。
3) The Pipe Book.,(1924)14章に "The Modern Briar"pp240-248がある。(別稿予定)J.Sasieni: An Apparatus for Seasoning and drying Tobacco Pipe Bowls,1919(GB)『S考察』が詳しい。
2)A.H.Dunhill(1954)は著書で、”たばこ葉のcuring” を次のように解説している。
Leaves that are simply dried have little more odor or taste than any other dried leaf. It is the curing and fermentation that gives the leaf its particular flavor. In all methods of curing the leaves may be partly dried by sun, but the two principal processes thereafter are known as air curing and flue curing. (after "The Gentle Art of Smoking". Chp2:The Growing of Tobacco,Curing,p39.)
3)R.C.Hacker(1984)は著書で、ebauchons工場での工程を説明する際に、briarをcureする--という表現を用いた。